コーヒーフレッシュはフレッシュか?
ファストフードや街のコーヒーチェーンで、コーヒーを買う時、必ず聞かれる「お砂糖、ミルクはご利用ですか?」の質問。
お砂糖の「お」も気になるけど、「ミルク」って言っていいのか?
非常に気になります。
「ミルク」くださいと言うと出てくるのが、小さいプラスチック容器入りの通称「コーヒーフレッシュ」(和製英語)です。
既にご存知だと思いますが、ミルクと呼んでますが、ミルク(乳成分)は一切入ってませんから!
このコーヒーフレッシュ、色は乳白色をしていて「生クリーム」のようなトロミがあり、味はミルク。よく出来ています。
実はマーガリンと同じように植物性油脂に水素添加をして人工的に作った乳製品もどきなんです。
人工的に作られているので、常温で長期間保存できる優れものですが、どこかがおかしいですよね。本物の生クリームや牛乳を常温で放置すると数日で腐ってしまいます。
腐らない「ミルク」
腐らない「ミルク」はファストフード店では、運営上便利でしょうが体に悪くないのでしょうか?
厚生労働省や農林水産省では、人工的に作られた模造乳製品(マーガリンやコーヒーフレッシュ)に含まれる「トランス脂肪酸」の危険性について注意しています。
どのような影響があるかというと、日常的に大量に摂取した場合、悪玉コレステロール、動脈硬化、心臓疾患、ガン、免疫機能、認知症、不妊、アレルギー、アトピーなどへの悪影響が報告されています。
米国では外食産業でのトランス脂肪酸の使用を全面禁止する方針が出されていますが、日本では今のところ規制の動きはありません。
WHO (世界保健機関)は、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう提示しています。
日本の厚生労働省は、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は、平均値で総エネルギー摂取量の0.3%であることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられるとしています。
なお、総エネルギーの1%のトランス脂肪酸の量は、1日当たり約2gに相当します。
コーヒーフレッシュ8ml中に0.2gのトランス脂肪酸が入っているとすると、コーヒーフレッシュ10個分がWHO勧告のボーダーラインということになります。
もっと恐ろしいのが「サラダ油」
「恐ろしい」というと語弊がありますが、トランス脂肪酸の量を気にし出すと「サラダ油」のトランス脂肪酸量は、代表的な日清オイリオの「日清サラダ油」で100g中「1.5g」。油の比重が約0.9なので100ml(大さじ6.7杯)だと「1.67g」。料理する時は大さじで計算するので、大さじ1杯で計算すると0.25gのトランス脂肪酸が入っています。
そもそも「サラダ油」ってなぜ「サラダ」という名前が付いているんでしょう?
サラダ油は、0度で5.5時間放置しても凝固や白濁の無いことを日本農林規格(JAS)が認定した食用油のことです。
ドレッシングやマヨネーズにも入っています。
「サラダ」という言葉から「フレッシュ」なイメージがありますが、製造の過程でトランス脂肪酸が発生していて、健康なイメージがあるサラダ感覚で大量に食べると、簡単にWHO勧告基準をオーバーしてしまいます。
トランス脂肪酸の健康への影響が問題になって以降、食用油メーカーは基準はサラダ油なのに違う名前の商品を前面に出して売り出しています。例えば日清オイリオの「ヘルシーリセッタ」。ヘルシーという言葉を使ってますが、トランス脂肪酸は同社のサラダ油と同じ1.5g/100gです。
ここまで来るとちょっと笑えてきます。
サラダとかヘルシーとか、言葉に騙されないようにしたいものです。
無難なのはオリーブオイル
食用油にトランス脂肪酸が入る原因は、利便性を求める消費者側の責任もあります。メーカー側はそれに応えているだけです。
サラダ油は常温でも冷蔵庫に入れても長期間保存でき、無臭でサラサラで濁りもありません。
この無臭、サラサラ、濁りなし、保存性が求められ、しかも大量に安く作る。消費者のニーズからサラダ油は生まれたのです。
製造過程は、マーガリンやコーヒーフレッシュのような人工的な乳製品代替品と同じく、植物油を高温で水素添加しています。その過程で生じるのがトランス脂肪酸です。
マーガリンやコーヒーフレッシュが商品化されたのも、消費者のニーズからだったこともお分かりですよね?
1970年代に動物性脂肪が健康に良くないという指摘があって、学校給食でパン食が普及したこと、小麦業界、パン業界が「朝食はパン」と言わんばかりの爽やかなコマーシャルを垂れ流したこと。
そこで登場した雪印の「ネオソフト」マーガリン。
確かに食パンに冷蔵庫から出したばかりのバターを塗るのは難しく、ネオソフトは画期的で大ヒット商品になりました。
動物性脂肪の健康への悪影響については、現在でも根強く言われていますが、少なくとも多くの論文、メタ分析を参照すると、トランス脂肪酸の有害性と比べると無視できるレベルです。
私達消費者は、情報に踊らされたり、利便性やコストだけで判断するのではなく、より賢くなっていく必要がありそうです。
普段使いの油として無難なのは、オリーブオイルです。
独特の香りが残っていて、ちょっと使いづらい料理もあるかもしれませんが、摂りすぎが指摘されているオメガ6系脂肪酸のリノール酸ではなく、オレイン酸なので安心してたっぷり使えます。
そこで結論!
・普段使いの食用油はオリーブオイルに
目玉焼きや炒め物に使ってもちゃんと美味しく食べれます。
・オリーブオイルが料理の味を邪魔する場合、圧搾抽出100%のなたね油
・洋食の場合はグラスフェッドバター
・サラダのドレッシングには、MCTオイルやオメガ3系脂肪酸のエゴマ油やアマ二油
・チャーハンや揚げ物にはメーカーが確かなラード
まあ、こんなところですかね!
食用油と健康の関係については、医学的な研究やメタ分析がまだ確立されたものがなく、日々「あれがいい!これが悪い!」という話が飛び交います。
賢く見守って行きたいと思います。
最後に、トランス脂肪酸の話から、脂質を摂ることを怖がったり、控えようと思ってはいけません。
毎回する話ですが、平均的な成人女性の1日に摂取するカロリー基準が2,000kcalで、三大栄養素のタンパク質、脂質、糖質から30%、30%、40%摂ることを前提にすると、脂質は最低600kcal=66.7g(大さじ5杯)は摂らないといけません。
ダイエット中の人は、糖質もそうだけど脂質も控えようと考えがちですが、それはよくありません。カロリー不足で、体調を維持できないからです。
糖質を減らす分、意識的に「大さじ5杯」を目安に自家製ドレッシングを作って野菜にかけるなどして、しっかり摂ってもらいたいと思います。
(KM)
(追補)
ブログ読者の方から、サラダ油、なたね油でも圧搾一番搾りのトランス脂肪酸ゼロのものがあるとご指摘を受けて、一部記述内容を改訂しました。
(改定前)・オリーブオイルが料理の味を邪魔する場合のみ少量のサラダ油
(改訂後)・オリーブオイルが料理の味を邪魔する場合、圧搾100%のなたね油