昨日のブログ「お砂糖、ミルクはご利用ですか?」を書いていく途中で、トランス脂肪酸の表示について食品メーカー各社の苦悩、社内の葛藤、大人の事情的なものが見えてきました。
大人の事情 その1
まず、下の表を見てください。表が横長なのでスマホで読んでいる人は拡大しないと読めないかもしれませんが…
この表は、昨日話題にしたコーヒーフレッシュの大手メーカー、スジャータめいらくのホームページに掲載されたトランス脂肪酸含有量です。
どこが気になるのかというと、上段の右端のスジャータプレミアムだけトランス脂肪酸が「0.2g」で他が「0.0g」という点。
よく見るとスジャータプレミアムは、他と違って容量が8mlと大きいので「0.2g」となっているのでは?と疑いたくなります。
それは下の段のスジャータホイップが「0.2g」とか「0.1g」と出てくるので、さらにおやおやおや…
よく見ると単位が100ml当たりになっています。
ここまで来て、ようやくカラクリが見えてきました。
スジャータホイップに100ml当たり0.2gのトランス脂肪酸が入っているのであれば、スジャータにも当然にトランス脂肪酸は入っているのではないか?
そうなんです。100ml中0.2gを、5ml当たりで表記すると「0.01g」。
入ってます。
そして表の一番下、欄外の注記には「小数点第2位以下は四捨五入」と書かれています。
確かに嘘はついていませんが、お客様相談室のページで、わざわざトランス脂肪酸含有量を公表するのであれば、「0.0」ではなく、ちゃんと「0.01」と書いた方がよかったのではないでしょうか?
実は、消費者庁が定めたトランス脂肪酸の表示に関するガイドラインでは、100g(100ml)当たりの含有量が「0.3g未満」であれば、「0 (ゼロ) 」と表示していいと定められています。
ちょっと納得がいかないガイドラインですね。
そしてこれは、あくまでもガイドラインであって、法律ではないので表示義務はありません。
大人の事情 その2
次に、トランス脂肪酸を含む代表例の「サラダ油」ですが、どのメーカーの商品を見ても「飽和脂肪酸含有割合」という表示になっていて、消費者庁のガイドラインは守られていません。
消費者庁のガイドラインでは、「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」「コレステロール」を表示することになっているのに、トランス脂肪酸の表示がありません。
これも大人の事情で、分かりづらくなっているようです。
もともと原料となる菜種油は植物由来なので不飽和脂肪酸です。
それが、精油の工程で水素添加することでトランス脂肪酸が一部に発生します。
この人工的に作られた脂肪酸は飽和脂肪酸なので、広く言えば「飽和脂肪酸」と表記しても嘘ではありません。
悪者の「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」「コレステロール」を表示するんだったら、トランス脂肪酸は飽和か不飽和かというと飽和なので、飽和脂肪酸に含めて表示すればいいんじゃない?と業界の誰かが言い出して、今のような表記になっているのではないかと思われます。
私は業界内の人間ではないので、メーカーの方でこのブログを読まれたら、真偽を教えてください。
大人の事情として面白いのは、上の写真は日清オイリオの「サラダ油」の表示なのですが、同じ会社の恐らくお客様相談窓口なのか品質管理の担当なのか、同社のホームページで主要製品のトランス脂肪酸含有量を公表しています。
また、これも大人の事情なのか、同社の「MCTオイル」だけはまた表示が違っています。
他の製品と表示を統一するのであれば「飽和脂肪酸含有割合100%」となるべきところ、「中鎖脂肪酸油100g」となっています。
中鎖脂肪酸は飽和脂肪酸なので、飽和脂肪酸の表示でいいのに、MCTオイル担当者は飽和脂肪酸のマイナスイメージを出したくなくて社内不統一には目をつぶって例外的な表示を押し通した(あくまでも想像ですが…)。
飽和脂肪酸は肉やバター、牛乳などに多く含まれ、動脈硬化予防のために摂取量を少なくすることが推奨されてきましたが、最近では動脈硬化との因果関係についてさほどの大きくないという研究結果も出てきています。
大人の事情 その3
最後に、トランス脂肪酸を含む代表例の「ファストスプレッド」(マーガリン)で、雪印メグミルクの取り組みが面白いのでご紹介します。
注目したいのが、「トランス脂肪酸の低減に取り組んでいます。」と前面に打ち出しているところです。
側面の成分表示では、業界他社と同じで「飽和脂肪酸」という表記で「トランス脂肪酸」の量は分かりません。
「あれっ?」「低減に取り組んでるんだったら、ちゃんとトランス脂肪酸の量を表記してよ!」と言いたくなりますが、トランス脂肪酸が入っていることを敢えて隠さない姿勢は評価できます。
日清オイリオと同じで、パッケージでは正確なトランス脂肪酸量は表示していませんが、同社のQ&Aサイトでは正確に公表しています。
・・・1食当りの『ネオソフト』(10g) には、約0.08gのトランス脂肪酸が含まれています。この量は、世界保健機関(WHO)の勧告(「1日当りのトランス脂肪酸摂取量を総摂取エネルギー量の1%未満にする」)の 1/27(0.037%)に相当します。
大人の事情 まとめ
食品業界の表示や言葉遣いは、非常に分かりづらいのと、敢えて誤解させるような表現が多くて、本当に困ってしまいます。
ですが、他の業界も同じです。例えば通信業界の料金プランなどはほとんど理解不能です。
今回あらためて分かったことは、同じ会社の中でも研究開発部門、営業・広告宣伝部門、お客様窓口部門、それぞれ立場が違うと、言うことが違うということです。
私たち消費者は、これらの大人の事情を理解して、商品を選んでいかないといけませんね。
(KM)